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経営コラム

改革を成功に導くためのノウハウ(2)

第2回 戦略を策定する 2006/06/26

仮説と検証とは

一般的に、「仮説と検証」とは、現状や環境要因を分析して仮説を立て、その仮説に基づき対応策を考え、実行することを言います。不確実性の高いビジネスでは、仮説検証サイクルを継続的に行うことが重要です。

戦略策定プロセスだけを見ても、効率的に問題の把握し、問題解決の方向性を導く手法としてこの「仮説と検証」が効果を発揮します。要は、少ない情報と経験と勘から"あたり"(=結論、仮説)をつけ、結論(仮説)ありきで、結論が正しいか否かの調査・分析(検証)のみを行うことになります。言うまでもありませんが、事実を曲げて結論が正しいことを検証することではありません。

戦略立案における仮説検証の作業ステップとしては、以下の通りです。

(1)経営上の課題を整理する

経営上の問題を経営・事業・組織・財務などの切り口から一つ一つ挙げていきます。また、外部環境(競合・顧客動向・トレンド・政治・規制)についても同様に課題を挙げていきます。その後、列挙した問題をモレなくダブリなく整理します。課題の整理には、次ページに補足説明します「戦略のフレームワーク(論理的思考の枠組み)」を用いると整理しやすくなります。通常、経営上の問題は多岐にわたりますが、検討すべき重要な課題・領域を選択し、「問題はここにあるのではないか」という"あたり"(仮説)をつけます。ビジネスにおける勘で"あたり"をつけるのですが、経験を積めば早期に確度の高い仮説を立てることができます。場合によりますが、課題に対して網羅的に対処するよりも、重要な課題を絞りこんで実行する方が良いと思います。

(2)問題の原因について生の声を拾う

次に、検討すべき課題に対して、各部署における問題のヒアリングなどを行い、定性的なデータを収集します。必要に応じて、顧客やユーザーなどへのアンケート、競合などの調査などを行います。ヒアリング・アンケートや外部調査の目的は、"あたり"(仮説)の正誤を立証することにあります。何を立証できれば仮説が正しいと言えるのか、何が立証されれば仮説は誤りとなるのか、を頭に置いて、必要な調査項目を最小限にして設計することがポイントになります。

    ヒアリングやアンケートの目的によっては、いつ、誰が、誰に、どのような項目をどのように収集
    するのか、といった根本的な事柄自体が異なってきますので、十分な事前の計画が必要です。
    例えば、顧客が減少している要因を突き止める調査で、既存顧客の満足度調査を実施している
    企業がありますが、正しくは、既存顧客ではなく、離れていった顧客に対しての調査をするべき
    です。また、ヒアリングなどで得た情報は、事実・意見・想定・思い込みなどを含みますので、
    利用の際は十分に注意して下さい。詳細については、アンケート設計手法などの書籍をご参考に
    して下さい。

最後に、ヒアリング等で得た問題を構造化(各々の問題の原因と結果の関係をツリー状に整理するなど)し、"あたり"が正しかったのか、誤っているのかを検証します。改革の現場では、通常このような仮説・検証を繰り返し、当初仮説から最終仮説まで段階的に詳細化していくことになります。

(3)定量データから仮説を検証する

ヒアリング等の定性データと同時に、売上情報や外部情報など定量的なデータをもとに、仮説の正誤を検証し、仮説の確度を高めていきます。手持ちの定量データから事業・顧客・商品などいろいろな切り口から分析を行うことが重要です。

    ただし、定量データについても、どこから、どのように収集された、どのように加工された情報かを
    確かめましょう。データの不完全性(不足・偏り・欠如など)や作為的な処理(平均化・排除など)
    がないか注意します。また、検証に必要な定量データが社内にない場合は、新たに情報を収集
    するか、外部情報を分析に利用するなどします。

実際に、戦略策定段階では実行しないと分からない点も多くありますが、仮説検証プロセスによって数少ない収集可能なデータからより短期間により確度の高い施策を立案することが可能となります。戦略策定後は、その仮説から実際の施策を立案し、その結果を検証する、修正するというサイクルを実施していくことになります。また、こうした戦略策定→実行→検証→改善には、戦略策定時点において、施策に対する評価指標を決めておき、必ず施策の効果を検証し、改善していくことが必須となります。また、社内のノウハウとして他に活用できるように、情報を蓄積し、社内で共有できる仕組みも重要となります。

事例

ハンバーガーのファーストフード店において、販促施策としてキャラクターグッズをセットにした商品を企画することになりました。過去にも同様の販促を行いましたが、商品の欠品や在庫過多が起きて問題が生じた経緯もあり、今回「どのようなセット商品をどのように販売管理すればよいか」について、検討することになりました。

この時点で、問題は「販促効果を加味した需要予測が行われていないこと」であり、「過去の販促効果を検証すれば、今回の販促商品企画の需要予測がある程度可能になるのではないか」(仮説)と考え、まず、店舗の状況の生の声を収集するために、数店舗の店長に対してインタビューを行い、インタビューから以下のような情報が得られました。

「通常、平日はお子様連れのお母さんが多く、夕方からは学生が多い」
「休日は家族連れの割合が多く、子供は幼稚園から小学生が多い」
「子供向けの販促品が思いもかけず女子高生に人気があり、欠品がでることがあった」
「販促期間中は来店客数が急に増えてきたり、急に減ったりすることがある」
「販促期間では、本部から提供される需要予測データが当てにならない」
「販促期間は売上が予測しにくいので、全体的にとくに通常より在庫を多く持つことが多い」
同時に、過去の同様の販促における販売状況を分析してみると、定番のチーズバーガーの売れ行きとてりやきバーガーの売れ行きが伸びていることが分かりました。この時点でも、チーズバーガーとてりやきバーガーを重点管理製品として行動を移せるかもしれませんが、まだ仮説や検証の深みが足りないと判断し、より詳細に分析を行うことにしました。

「販促グッズ→ある客層が増える→ある客層の好みがチーズバーガー・てりやきバーガー」の図式、つまり販促グッズによって客層が変化するのではないか(仮説)を立てて、販促グッズ(前回および今回のグッズのキャラクター)の人気度および好みのハンバーガーを店頭でアンケート調査する(検証)ことにしました。

アンケートの結果、前回のおもちゃは3〜6歳の子、15〜18歳の女性に人気があり、今回のおもちゃはどちらかというと7〜14歳の女性に人気があること、加えて年齢層別顧客の商品の趣向を知ることができました。この結果と過去の顧客層別販売データをもとに分析(検証)した結果、

<前回のケース>
・販促グッズは3〜6歳の子ども、15〜18歳の女性に人気がある
・3〜6歳の子供連れのお客様には、チーズバーガー・フィッシュバーガーがよく売れる
・15〜18歳の女性のお客様には、てりやきバーガーがよく売れる
・子供連れのお客様は販促期間中の客単価は上がらず、安価なチーズバーガーの売上が増加している
・結論として、客層別のグッズの人気度とバーガーの売上には、かなりの相関がみられる

  「仮説:子供連れのお客様は低価格志向・健康志向が強く、子供にせがまれて、販促セット商品を選択する母親像が予想される。一方、前回の販促結果から、流行に敏感な女子高生はリピート率が増加し、グッズ目当ての来店数が大幅に向上していると予想される。女子高生にはやや高価格であるがボリューム感のあるてりやきバーガーが人気があり、販促の結果としててりやきバーガーの売上向上に繋がっていると考えられる」

<今回のケース>
  「仮説:7〜14歳の女子小学生および女子中学生がメインターゲット。口コミによる流行や宣伝によっては、女子高生にまで販促効果が広がる可能性もあり。ターゲットは、自分で商品を選択可能。この顧客層の人気商品はてりやきバーガーとフィッシュバーガー。その他、チキンバーガーを好みとする潜在顧客が多い。グッズのキャラクターの人気度から子供連れの母親はメインターゲットにはならないと予想され、チーズバーガーの売上増加はあまり期待できない。ターゲット層の来店時間は平日夕刻・週末に集中することが予想され・・・」

このケースでは、かなり具体的な仮説にまで踏み込み、商品企画を実行することが可能となりました。てりやきバーガーとフィッシュバーガーの2種類+新製品のチキンバーガーの計3種類をセット商品として企画することになり、また過去の販売データ・販促データなどから販促時の日別時間別需要予測データを作成し、店舗に配布しました。その結果、店舗における事前の販売計画の立案、重点管理商品の管理の強化・適正在庫の確保、来店時間に合わせたパートシフト計画の立案などが功を奏し、前回以上の販促による売上アップの結果を残すことができました。



次ページでは、上記の補足として、戦略のフレームワーク(戦略思考の枠組み)のSWOT分析を例にとって説明致します。

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